foreign_lg 版 (精华区)
发信人: tenderlylove (永远的结72~爱你不变), 信区: foreign_lg
标 题: 鼻(芥川龍之介)日文版----3
发信站: 听涛站 (2001年12月20日04:40:44 星期四), 站内信件
さて二度目に茹でた鼻を出して見ると、成程、いつになく短くなっている。これではあ
たりまえの鍵鼻と大した変りはない。内供はその短くなった鼻を撫(な)でながら、弟
子の僧の出してくれる鏡を、極(きま)りが悪るそうにおずおず覗(のぞ)いて見た。
鼻は――あの顋(あご)の下まで下っていた鼻は、ほとんど嘘のように萎縮して、今
は僅(わずか)に上唇の上で意気地なく残喘(ざんぜん)を保っている。所々まだらに
赤くなっているのは、恐らく踏まれた時の痕(あと)であろう。こうなれば、もう誰も
哂(わら)うものはないにちがいない。――鏡の中にある内供の顔は、鏡の外にある内
供の顔を見て、満足そうに眼をしばたたいた。
しかし、その日はまだ一日、鼻がまた長くなりはしないかと云う不安があった。そこ
で内供は誦経(ずぎよう)する時にも、食事をする時にも、暇さえあれば手を出して、
そっと鼻の先にさわって見た。が、鼻は行儀(ぎようぎ)よく唇の上に納まっているだ
けで、格別それより下へぶら下って来る景色もない。それから一晩寝てあくる日早く眼
がさめると内供はまず、第一に、自分の鼻を撫でて見た。鼻は依然として短い。内供は
そこで、幾年にもなく、法華経(ほけきよう)書写の功を積んだ時のような、のびのび
した気分になった。
所が二三日たつ中に、内供は意外な事実を発見した。それは折から、用事があって、
池の尾の寺を訪れた侍(さむらい)が、前よりも一層可笑(おか)しそうな顔をして、
話も碌々(ろくろく)せずに、じろじろ内供の鼻ばかり眺めていた事である。それのみ
ならず、かつて、内供の鼻を粥(かゆ)の中へ落した事のある中童子(ちゆうどうじ)
なぞは、講堂の外で内供と行きちがった時に、始めは、下を向いて可笑(おか)しさを
こらえていたが、とうとうこらえ兼ねたと見えて、一度にふっと吹き出してしまった。
用を云いつかった下法師(しもほうし)たちが、面と向っている間だけは、慎(つつし
)んで聞いていても、内供が後(うしろ)さえ向けば、すぐにくすくす笑い出したのは
、一度や二度の事ではない。
内供ははじめ、これを自分の顔がわりがしたせいだと解釈した。しかしどうもこの解
釈だけでは十分に説明がつかないようである。――勿論、中童子や下法師が哂(わら)
う原因は、そこにあるのにちがいない。けれども同じ哂うにしても、鼻の長かった昔と
は、哂うのにどことなく容子(ようす)がちがう。見慣れた長い鼻より、見慣れない短
い鼻の方が滑稽(こつけい)に見えると云えば、それまでである。が、そこにはまだ何
かあるらしい。
――前にはあのようにつけつけとは哂わなんだて。
内供は、誦(ず)しかけた経文をやめて、禿(は)げ頭を傾けながら、時々こう呟(
つぶや)く事があった。愛すべき内供は、そう云う時になると、必ずぼんやり、傍(か
たわら)にかけた普賢(ふげん)の画像を眺めながら、鼻の長かった四五日前の事を憶
(おも)い出して、「今はむげにいやしくなりさがれる人の、さかえたる昔をしのぶが
ごとく」ふさぎこんでしまうのである。――内供には、遺憾(いかん)ながらこの問に
答を与える明が欠けていた。
――人間の心には互に矛盾(むじゆん)した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の
不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出
来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば
、もう一度その人を、同じ不幸に陥(おとしい)れて見たいような気にさえなる。そう
していつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる
。――内供が、理由を知らないながらも、何となく不快に思ったのは、池の尾の僧俗の
態度に、この傍観者の利己主義をそれとなく感づいたからにほかならない。
そこで内供は日毎に機嫌(きげん)が悪くなった。二言目には、誰でも意地悪く叱(
しか)りつける。しまいには鼻の療治(りようじ)をしたあの弟子の僧でさえ、「内供
は法慳貪(ほうけんどん)の罪を受けられるぞ」と陰口をきくほどになった。殊に内供
を怒らせたのは、例の悪戯(いたずら)な中童子である。ある日、けたたましく犬の吠
(ほ)える声がするので、内供が何気なく外へ出て見ると、中童子は、二尺ばかりの木
の片(きれ)をふりまわして、毛の長い、痩(や)せた尨犬(むくいぬ)を逐(お)い
まわしている。それもただ、逐いまわしているのではない。「鼻を打たれまい。それ、
鼻を打たれまい」と囃(はや)しながら、逐いまわしているのである。内供は、中童子
の手からその木の片をひったくって、したたかその顔を打った。木の片は以前の鼻持上
(はなもた)げの木だったのである。
内供はなまじいに、鼻の短くなったのが、かえって恨(うら)めしくなった。
するとある夜の事である。日が暮れてから急に風が出たと見えて、塔の風鐸(ふうた
く)の鳴る音が、うるさいほど枕に通(かよ)って来た。その上、寒さもめっきり加わ
ったので、老年の内供は寝つこうとしても寝つかれない。そこで床の中でまじまじして
いると、ふと鼻がいつになく、むず痒(かゆ)いのに気がついた。手をあてて見ると少
し水気(すいき)が来たようにむくんでいる。どうやらそこだけ、熱さえもあるらしい
。
――無理に短うしたで、病が起ったのかも知れぬ。
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我们的结72--永远爱你不变!!!!!!
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